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新しい室内協奏曲を聴ける幸せ

ベルク:室内協奏曲、モーツァルト:「グラン・パルティータ」

内田光子

UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)


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アルバン・ベルクの「室内協奏曲」は、もう、録音される機会がないのではないかと思っていました。あまりにも演奏するのが難しすぎる(ブーレーズはこの解説の中で、「ほとんど狂気とも言えるような意図の上に成立している」と言っている)ことと、複雑で普通の人には極めてとっつきにくく、商業ベースにも乗りそうにないからです。ベルクの音楽でも、例えば、「ヴァイオリン協奏曲」や「抒情組曲」は、おそらく今後もヴァイオリンと弦楽四重奏の重要なレパートリーとして演奏されていくと思いますが、室内協奏曲はヴァイオリン・ピアノのソロに13の管楽器という特殊な編成でもあり、なかなか取り組みにくいものです。

しかし、内田光子とブーレーズとテツラフがやってくれました。この曲を新しい解釈で聴くことできるのは本当に幸せです。1楽章がピアノ協奏曲、2楽章がヴァイオリン協奏曲、3楽章が二重協奏曲という構成で、3楽章冒頭にあるピアノとヴァイオリンのカデンツァは本当に劇的です。内田光子は解説の中で、ベルクに一番近い作曲家はシューマンであり、この2人が本当のロマン派だと言っています。実際、この演奏は冒頭からピアノは甘く始まります。ブーレーズ・バレンボイム・ズッカーマンの録音に比べると、角が取れたというか、よりロマン的な演奏になっています。

日本盤では、3人による座談会と内田光子へのインタビューが掲載されています。両方とも大変興味深いもので、一読の価値があります。ベルクの「3」という数への異常なこだわりとか、内田光子のこの曲に対する愛情等が書いてあります。

一緒に入っている曲は、グランパルティータです。13管という点で共通しているのですね。これには自分は今まで気づいていませんでした。商業ベースに乗せるためには、これくらい有名な曲を入れる必要があったのでしょう。アンサンブル・アンテルコンタンポランがモーツァルトをやるっていうのは、ちょっと信じられない気がしますが、演奏は普通に、フランスの優秀な管のアンサンブルになっています。若干、この曲の魅力である色彩感に欠く気がするのは、おそらくバセットがベーム式だからではないかと思います。クラリネットはベーム式でも何とかなりますが、バセットだけはエーラーじゃないとあの独特の雰囲気はでないのかもしれません。


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