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音楽評価の難しさ:神奈川ギター新人ギタリストオーディション

自分は吹奏楽出身だから、コンクールやコンテストをかなり経験している。理不尽な判定で負けたこともあるし、逆に疑惑の判定で辛くも予選を抜けた経験もある。そんな自分が久々にそういう採点付きのイベントを聞いた。それは、神奈川ギター協会の新人ギタリストオーディションである。地元の杉田劇場が会場だったので、会場視察も兼ねて行ってみた。自分はギターに関してほとんど知識がないし、CDもほんの少ししか持っていない。 なので、自分の耳は全く信用にならないのであるが、自分の聞いた感じと審査の結果はかなり異なっていた。

結果は、ホームページにあるように、

入賞:松澤結子

入賞:原田斗生

入賞:佐波岳

入賞:田中春彦

入賞:西村拓也

であった。どうも、これがそのまま順位になっているらしい(ここ で松澤さんが一位ということ等から推測。正式には未確認)。ここからは私個人の勝手な感想を言ってみる。

まず、2位と推測される原田さん。彼は9歳だということである。小さい体に大きなギターでちゃんと演奏するので驚かされるのであるが、入賞に値する演奏とは私には思えなかった。確かにそれなりに音楽的に弾いているのではあるが、特に自由曲に舞曲的なリズム性がなく(ガボットとジーグだった)、ジーグでは6つの音が転びまくり、今後に期待なのかと思われた。

気の毒だったのは、入賞に漏れた島田賢さんだった。本選に残った7人の中で最下位という結果だったが、自分はそれほど悪くないと思った(4位くらいに予想)。おそらく自由曲の選曲ミスだろう。かなりモダンで意欲的な作品を選んでいたが、審査員にウケなかったのだろう。こういう曲を選ぶときは、よっぽど隙なくやらないと叩かれてしまう。

1位の松澤さんにも驚いた。ここによると、世界の名器を使っているのだそうだ。自分の耳がタコなのだろうが、ぱっと聴いてすごい良いと思うほど良い音は思わなかったし、演奏もあまり正確だとは思わなかった(予選より出来は良かったが)。しかし、会場では彼女が一位だろうという声も聞こえていたので、ちゃんとした人が聞けばそうだったのだろう。

自分の予想では、田中さん・佐波さんが1位を争うのではと思った。田中さんは本選で10代の若い人が多かった中で、一人大人の演奏をしていたと思う(と言っても20代だと思うが)。音も音楽も魅力的だった。素人が聞くと彼を評価しそうな気がする。

佐波さんは若手(見た目中学生?)だが、自分には彼が一番正確に弾いているように思えた。本選の課題曲のタレガのプレリュードNo1は、講評で審査員が難しかったと言っていたが、確かにそのとおりで、自分の聞いた感じでは、その(魅力的な)コード進行をきちんと弾けている人が(本選であるにも関わらず)ほとんどいなかった。そんな中で彼はかなり正確にやっていた。ただ、若干音楽に硬さがあるのが惜しいと思った。

最後の入賞の西村さんは、他の入賞者に比べると正確性が欠けるように感じられたし、特別な魅力も感じなかった。

この下に次点の若手がいたのだが(名前は忘れた)、彼の演奏はなかなかよかった。ただ、曲間をほとんど空けなかったり、結構大胆な感じの態度で、大丈夫かなーと思ったが、入選から漏れてしまった。表現が良いと思えるところもあったので惜しかった。

教訓と思えることは、現代曲をやるときは隙を見せちゃいけない、子供や障害者が相手のときは完膚なきまで叩きのめさないと負けてしまう、と言ったところだろうか。吹奏楽もギターも似たような世界だなと思った(吹奏楽の世界では20世紀以降の音楽をほとんど理解していない人が審査をしていることがふつーにある。ギターはそんなことはないだろうが・・・)。


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