一般的にエーラー式はベーム式に比較して音が良いと言われることが多いです。また、ウィーンフィルのクラリネットは伝統的に音が美しいと言われますし、確かにそうだと思います。しかし、最近はあまり関係なくなっているように思います。その理由は、国際化です。双方のシステムは変わっていませんが、音は明らかに双方歩み寄ってきています。例えば、昔のドレクリュースとかランスロのような、ばりばりのフレンチサウンドというのは死滅してしまいました。イギリスももうブライマーのような人はいません。今、エーラー式とベーム式をブラインドテストして完全に聞き分けるのはかなり難しくなってきていると思います。
また、最近はライスター以来エーラー式で才能のある人があまり出ていないような気がします。これは、単純に人口の違いかもしれません。最近は、圧倒的に、ベーム式が多いでしょうから(これは私が知らないだけかも)。
ウィーンフィルのクラリネットは、シュミードルから変化があらわれてきました。シュミードル自体はとてもすぐれた奏者と思いますが、いわゆるそれまでのウィーンフィルの伝統とはちょっと違っているように思います(また個人的にはソロで良い演奏を残していないように思えるのが不満です。)。他にウィーンフィルの伝統を受け継ぐ人が出てくれれば良かったのですが、どうもそうでないようで。今のウィーンフィルのクラリネットはそれほどめだった特徴もないように思います。
では最近私が美しい音だと思っているのは
人であげると、シフリンとヘプリッヒをあげます。でも、シフリンは最近の録音を知らないので、今は不明(と思ったら、 CDがグラモフォンから出た:1999年5月。健在だった。)。一般論でいうと、今一番期待できるのは、古楽器かもしれません。クラリネットの響きの美しさをちゃんと出そうとしていると思います。ヘプリッヒはすばらしいと思います(18Cオケのソロにその片鱗が見られます)。でも、古楽器でも、アントニー・ペイのように、今ひとつ、古楽器の美しさを十分伝えないように思える人もいるので、結局人依存かもしれません・・・システムや方式じゃないと・・・モーツァルトのディベルティメントを、ウラッハ版・プリンツ版・ヘプリッヒ版と比べてみると、ウィーンクラリネットの変化と古楽器クラリネットのメンバーのがんばりを感じることができます(録音技術の差もあるかもしれません)。