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量子力学に興味を持つ大学生が増加中・・・だが

ナノテクブームで、量子力学に興味を持つ大学生が増加中
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ナノスケールでの量子力学は理解しやすい。そのため、これまで敬遠された量子力学に興味を持つ学部学生が増えてきた。

のだそうだ。悪い傾向ではない。しかし、

従来は東大でも東京理科大でも量子力学は大学院生が学ぶものだったのに対し、

だそうだ。工学部はともかく理学部に入って、量子力学もやらないで大学を卒業してしまうものなのだ。しかも東大でさえ・・・。残念な話だ。ちなみに自分は東北大だったが、大学一年でいきなり、量子化学を教えられた。数学で偏微分もならっていないのに、いきなり2階の偏微分方程式が出てきて面食らったものだ。ほとんどの学生が理解できていなかった。しかし、意図はわかる。化学は量子化学をベースとして理論構築されている(高校の化学ですら背景には量子化学がある)ので、変に遠回りするよりも最初にやってしまったほうがよいのだ。これはちょっと極端な例だろう。しかし、量子力学くらい大学でやっておきたいものだ。不確定性原理くらいでも知っておくと、物の見方が変わるものだ。

素粒子物理の壮絶な歴史

クォーク—素粒子物理はどこまで進んできたか (ブルーバックス)

南部 陽一郎

講談社


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またもや流行にのって、ノーベル賞受賞者による素粒子本を読んでみました。この本は素粒子論の歴史的な発展をあまり省略をせずに時系列に書いたものです。物理学に貢献した人のプロフィールも入っていて参考になります。

このように歴史的な発展を記述した科学の本というのは貴重です。数学・物理の本は結論のみが書かれることが多いです。その方が、理論がすっきりしているし、簡潔に書くことができるからです。理論の出発時点というのは非常にわかりにくい状態であることが多く、それをいろいろな学者が整理して、簡潔な形に持って行きます。その途中には紆余曲折があります。この本はそれを多少泥臭く書いてくれています。内容があまり理解できなくても、いかに苦労を重ねたかが伝わってきます。

自分は素粒子論というと、華麗な群論等の代数を使った美しい世界というイメージを(勝手に)持っていたのですが、この本を読んで全然イメージが変わりました。理由のつかない粒子が実験で次々と出現し、それを説明するために、理論をパッチを張るかのように作っていった過程が示されています。それは結構泥臭いものです。

この本は、これ以上簡単にはかけないのではないかというほど、素粒子論という難しい領域をわかりやすく書いていますが(例えば時々古典的な物理学とのアナロジーとかが書いてあって参考になる)、正直、自分は内容を理解できないところがかなり多く(というかほとんど?)ありました。・・・(数学出身なのに情けない)。クォークの「色」とか「香り」とか言われても・・(???)。それでも、あまり細かいところには気にせずに一気に読んでしまいました。わからなくても一読の価値があると思います。

感じたのは湯川氏の中間子論が、いかに偉大な業績だったかということです。原子核と電子という原子の模型と電子の振る舞いに関する説明が量子力学によってできあがった後に、理論的に追求して、中間子という不思議な素粒子(のちに素粒子じゃないとわかるが)の存在を大胆にも予言しました。その後の素粒子論の発展は、この中間子論のパラダイムに乗って進んでいくという意味で、近代素粒子学の父と言ってもよいのではないかと思いました。

また、最後に素粒子物理学の現状に対する憂いが少し書かれます。近代素粒子学は、割と科学としてハッピーな発展をしたと思います。巨大な加速器(粒子を高速で激突させて新しい粒子を見つけたり、反応を調べたりするもの)という単純な装置を金をかけて作って、既存の理論で説明できない新しい現象を次々に発見し、それを新しい理論で説明するという(またその逆もある)。自動車の両輪がそろって進むような状況でした。しかし、現在、(この本の時点1998年で)最先端の理論であるスーパーストリング理論になってくると、実験で検証するにはあまりにも大きいエネルギーが必要という状況になってしまって実験的な検証が難しくなっています。ということで、素粒子物理学の転換点にいるという認識を南部氏は示しています。

今後の素粒子物理の発展を見守りたいと思います・・・。

神への挑戦

消えた反物質—素粒子物理が解く宇宙進化の謎 (ブルーバックス)

小林 誠

講談社


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小林氏がノーベル賞をとってから、急速に売れた本。自分も流行に乗って読んでみました。・・・わからない。これはちょっと難しいです。量子力学の素養がある程度ないとわからないんじゃないかなあ。自分は大学で関数解析の授業もとってたから、分かって当然のはずなのですが・・・。ゲージ理論とか代数の人はやってた記憶がある。でも、自分が比較的新しい(全然最新じゃない)物理を知らないことに驚きました。まず反粒子というものを知らない。例えば、電子に対して、同じ質量を持ち、電荷が反対な、陽電子というのが存在して、電子と衝突すると光子となる・・・(ディラック(懐かしい名前)が1920年代に予言して1930年代に存在が確認された)。そういうものがあるとなると、宇宙がなぜほとんど物質からできていて、反物質からできていないのか、という根本的な疑問に到達する。そうしたことを電子よりももっと根源的な物質であるクォーク(名前くらいは知ってた)から考えて、数学的なモデルを作って、対称性の破れという上記の宇宙の成り立ちにつながる現象を説明した・・・というのが小林氏らの貢献でした(意外と古いのですね)。よくわからなくてもすごいことはわかる。これは、もう神に対する挑戦と思ってしまいます。「もの」に対する認識が根本的に変わってしまう。哲学や宗教やってる人は、こういった事実を知ってないと、やっていけないのではないかと。量子力学くらいまでは結構ポピュラーになってきてると思いますが、まだまだ先があるのですね・・・。

ちなみに図書館で借りたのですが、第三版2008年10月20日発行でした。新しくてびっくり。ノーベル賞受賞後リクエストで入ったんでしょうね。

ノーベル賞益川教授のインタビュー

ノーベル物理学賞が日本から3人もでたことは、大きな驚きでした。

その中で、益川教授のインタビューで印象に残ったのは、現状の日本の物理学界をどう思うかと聞かれて、

「物理学の結果というのは、20年・30年たってわかる。米国では30年前に自然科学を志す人が減り、お金儲けの道へ行き、大学は外国人だらけになった。日本で今同じようなことが起こっているように思える。今から30年後が懸念される。」

というような答えをしていました。

米国は自然科学や工学の物作りの国から、金融を中心としたサービスの国になりました。そして、それが今行き詰まっているかもしれないという世界状況にあります。それだけに、上の言葉は重みがあるように感じました。


また、ちなみに・・・

自分のころはまだ理工系には(かろうじて)人気がありました。私より少し下の代になってくると、医者を目指す人が増えてくるようになります。今は理工系は全く人気がなくなりました。給料安いし、苦労するということで。N○○の社長も以前は理系・文系交代でやってましたが、今は、文系が続いています。今は、文系支配の社会です。これが今後どうなっていくか・・・。

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