オーケストラでクラリネットを吹く場合、B管・A管の二本は必須だ。場合によってはC管も必要になることがある。楽譜には(当然)どれかの調で書かれている。しかし、どの管を使うべきかというのは、必ずしも楽譜に書かれている通りである必要はなく、奏者に判断が委ねられていると考えることもできる。この問題について、(アマ・プロ関係なく)クラリネット奏者の考え方として、概ね以下の3つがある。
1.楽譜至上主義者
楽譜の指示を絶対とする考え方である。楽譜の指示通りの管で吹く。
2.結果至上主義者
楽譜の指示よりも、どの管で吹くのが、一番良い結果が得られるかを優先する考え方である。
3.その中間
曲に応じて、柔軟に選択を行う考え方である。
例えば、以前録音をupしたタコ5の3楽章のソロはA管で楽譜の指示がある。しかし、実はあのソロはB管で吹く方が吹きやすい。楽譜至上主義者ならA管で吹くが、結果至上主義者ならB管で吹くかもしれない。不滅の2楽章は、A管・B管別の指示だが、結果至上主義者ならどちらかに揃えるかもしれない。
特に選択に迷うのは、in Cの指示である。最近はC管を持っている人も多いが、C管はあまりメジャーな存在とはいえず、大体普通の人はそこまで買うお金の余裕がないだろう。
さて、自分の(狭い)経験では、プロに話を聞くと、2.に近い立場を取る人が多いように感じる。おそらく合理的に考えるのだろう。
で、私はというと、1.に近い3.というところだろうか。基本結構いい加減である。タコ5のソロは、A管のほうが、暗いイメージに近いのではないかと思い、A管を選択した。
in Cの指示は、自分は基本B管で吹く。それはC管で吹いて欲しいという指示で、A管とB管では、B管のほうが音が明るくC管に近いと思うからだ。例えば、ブラ4の3楽章はin Cの指定だが、これをどっちを選ぶかは迷う。3楽章以外は全てA管だから、B管で吹くとそのためだけに2本楽器を使わなければならない。しかも、4楽章はアタッカだから持ち替える時間がない。自分はB管で吹き、4楽章の冒頭だけB管で吹いて、休みでA管に持ち替えている。
あと、実はin Cの楽譜を、A管へ読み替えできないという情けない事情もある。例えば、モルダウの冒頭はin Cだが、本当はB管よりはA管で吹いた方が吹きやすいだろう。
大抵のin Cの指示は、B管で吹いてかまわないと思っている。例えば、第九の2楽章はin Cだが、C管を使うまでもないと考える。しかし、どうしてもC管が必要と思うケースもある。その代表はマーラーだ。巨人や第四のin Cの指示は明らかに、C管の華やかな音色を要求している。そういう時は楽器を借りてくるしかない。
C管を持っていても、2ndを吹いてくれる人も一緒にC管でなければ意味がないと思うから、あまり買おうという気にはなかなかなれない。
これからも悩むことが多いかもしれないが、これもオケのクラリネット吹きの楽しみの一つと言うことができるだろう。