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崩壊するアメリカ

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

堤 未果

岩波書店


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レーガン〜ブッシュ(子)までのアメリカは基本的に保守主義の時代だった。保守主義とは、アメリカの場合、小さい政府を指向する。市場の力を利用して競争によって、より良いサービスを実現していこうという考え方である。しかし、この本では、そういう考え方によって、いかにアメリカがダメになったかを厳しい現実として示している。アメリカで医療の無保険者が多いことはよく知られているが、医療費の高騰が尋常じゃない。病院に一泊すると数十万円するのだ(!)。だから、日帰りお産というのがあるそうだ。また、病気によって入院することによって「中流」家庭が破産してしまうケースが増えているのだそうだ。結局、高い保険代を払うことができる金持ちだけが十分な医療が受けられるという状況にある。貧富の差が広がる方に倒れているのだ。そして、貧困層に転落した若者は、戦争ビジネスの派遣会社によって、軍人としてではなく、民間人としてイラクに送り込まれる。そこには、自分を守る武器もなければ、負傷・死亡したときの保証もない。放射能で病気になって死ねば、現地で火葬されることにサインしなければならないのだ。

アメリカは万人にチャンスがある自由な国家ではなかったのか?今は階層が固定化し、格差が拡大している。市場を利用することによって起こっていることは、大企業による寡占である。医療も寡占により、医療費がつり上げられている。これは何かおかしい。アダム・スミスが理想とした自由の姿ではない。例えば、わかりやすいのは、アメリカはとうもろこしの輸出自由化をメキシコにのませ、国家からの補助によって安価にして大量に輸出し、メキシコの農業を破壊した。そうして、農業から追われたメキシコ人は移民となってアメリカに流入した。これは、アダム・スミスが厳に戒めたやり方ではないか。

まあ、こうなると、AIG幹部のボーナスへの風当たりが強いのも止む無しという感じであろうか。
日本にとっても全然他人事ではない。


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