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カフカ「城」
変身と並ぶカフカの代表作。城に呼ばれた「測量士」が、城に行こうとするが、いろいろな障害(?)にぶつかり近づくことができない。という状態が延々と続く、という未完の作品である。城は一種の官僚機構のように解釈されるときもあるが、確かにそういう感じはする。最初は珍しくておもしろいと思うが、文庫本で600ページあるからだんだんと飽きてくる。しかし、ストイックなまでに、この主人公と他の登場人物との間のダブルボケのようなやりとりが続く。読者のカタルシスを一切否定する。不思議な作品である。
源氏物語 巻十(瀬戸内訳)
瀬戸内の訳は大変わかりやすく、多少くどいくらいきちんと書き下されている。結構ストレートな性的表現もあって驚くこともあるが、万人に薦めることのできる訳と言えるだろう。しかし、これがベストかと言われると難しい。源氏のパーフェクトな訳はあり得ない。必ず訳者の色が出てしまう。いろいろな訳にふれつつ源氏の本質に近づいていかなければならないのかなと思う。
book review:「予告された殺人の記録」
しかし、読後感はあまりすっきりしない。花嫁が以前通じた相手は本当に被害者だったのか、ということは曖昧にされているし、「人の名誉のための殺人は肯定されるのか?」というテーマが含まれていて、倫理的な検討をするのかと思わせるが、結局あまりされない。
この本を読んだ多くの人は、実在の事件に基づいているということに感心をもったようだが、それは覗き的な見方というもので、純粋にこの文学を受容している態度ではない。よく出来ている作品だが、やや消化不良だった。
藤沢周平を読む
三屋清左衛門残日録 (文春文庫)
著者:藤沢 周平 |
最近、時代物がはやっているという。自分はその手の作品を全く読んだことがなかったが、はやりにのって少し読んでみることにした。江戸時代に少し興味がある。選んだのは藤沢周平の三屋清左衛門残日録だ。隠居した元用心のエピソード集というものだ。江戸武士のこころがわかるのではないかと期待して手に取った。
感想だが、良質なエンターテイメントという感じだ。これを時代物というのだろうか?という疑問がわいた。設定は江戸時代にしているものの、扱っているテーマは普遍的・・・というほど大げさではないが、現代にも通用するものである。文体も平易だし、非常に現代的であると感じられた。また、主人公は隠居とは言うもののヒーローとして描かれている。物語として読みやすい。こういう話を好む人は多いだろう。テレビドラマにもしやすそうだ。しかし、自分には物語を楽しむという習慣があまりない。実用的な本のほうが基本好きなのだ。これだけ読めば、この作家についてはもう十分という気分だ。