テレビでおくりびとをやったので見た。地味に良い映画だと思った。これが大きな賞をとるようなものなのかはよくわからないし、行列して見に行くようなものでもないと思うし、万人が感動するようなものでもないと思う。
死という重くなったり・泣きが入りそうなテーマを選んでいるが、クールに描写することによって巧妙に浪花節的にならないように配慮されている。また、スタッフの意図は、死よりも生の賛歌であるように思える。死はいろいろな表情を持っているけれども、それはあまり本質的でないというか、重要ではなくて、様々な死の上に成り立っている生に意味があるのだと。生を象徴する行為として、「食べる」シーンが取り上げられる。
脇役が皆すばらしい。山崎努はひさびさの名演技だろう。役者の中では、この作品の一番の功労者だろう。余貴美子も素晴らしい。その他にも沢山の脇役の名演技がある。これだけ脇を固められれば、主役の本木はとてもやりやすかっただろう。広末は演技は微妙だと思ったけれど、まだオーラはあると思った。このまま10年後を迎えるとさすがにやばいかもしれないけど。
ほとんど展開が読めるような話ではあるのだが、作りが丁寧でいろいろと考えさせられる映画だ。しかし、この映画は日本人にとってはとても自然な、違和感のないものであるように思える。納棺士には我々馴染みがないけれども、そのやり方を初めて見ても、「すごい」と思うよりは、「うん。こうするかもしれない」というような感覚を持った。だから自然すぎて、あまり感動できないという人はいるのではなかろうか。外国人が見るとどう感じるかは想像ができない。