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小説「ノルウェーの森」

映画を見て興味を持ったノルウェーの森を読んでみた。自分はおもしろいと思った。映画で感じたような不可解さはなく、賛否両論ある部分もあるとは思うが、ちゃんとした小説だった。映画は原作から逸脱しないようにしていることがわかったが、大事な部分が抜けているような気がする。

映画の最大の問題は、「レイコさん」をちゃんと描けていないことではなかろうか。原作では、非常に重要な人物なのに、映画ではかなり描写が省略されている。だから、例えば、ラストのくだりがとても不自然に感じる(原作でも微妙だとは思うが)。

映画がDVD化されたら、もう一度ちゃんと確認してみよう。疑問点が多少解決するかもしれない。あれをまた全部見るのかと思うと少しつらい気もしないでもないけど。

攻殻機動隊(2)

映画とアニメを見て興味を持ち、原作を読んでみた。ネットワークが高度に進化して、ネットワーク上の実体と自分の境がなくなってくるようなイメージ。

しかし、難しい・・・わからなかった・・・2から先に読んだのがいけなかったのかな…

キャッチャー・イン・ザ・ライ

この村上訳で初めて読んだ。文章はいかにも村上春樹という感じで、鬱陶しいと最初思うけれども、段々と慣れてきて、これはこれで雰囲気とあっていると思うようになる。作品には感動した。しかし、これはいろいろな解釈ができるだろう。単純に青春って素晴らしいみたいにはならない。主人公は純粋らしくも見えるが、未熟にも見える。その単純には割り切れないところが、傑作たる所以なのかもしれない。一般的なタイトルである、「ライ麦畑でつかまえて」は良くない訳だと思った。村上春樹がこのタイトルをつけたのは理解できる。

テルマエ・ロマエ 1

周りで評判よかったので読んでみた。ローマ時代の建築家がタイムスリップして、日本の風呂文化を学び、ローマ時代に持ち帰り活躍するという話。アイディアはおもしろいけども、自分はあまり楽しめなかった。笑えそうで笑えないというか。やや少女マンガ的な画風もあまり好みではない。ローマの文化がわかるのはおもしろい。

帰ってきたオシム(book review:「考えよ!」)

オシム元監督は脳梗塞で倒れて、日本サッカー代表監督を続けられなくなったが、不幸中の幸いで脳にはダメージがなく、監督業は無理としても、リハビリを続けながらサッカーに関わる仕事を再開している。この本は4月に出版された彼の最新の著書であり、南アフリカワールドカップの展望や、日本代表への提言等の最新の話題が彼自身の言葉によって語られており、とても興味深い。彼は監督をやめてからも、日本サッカーについての関心を失っておらず、中村(俊)vs本田や、日本のFwについて等、我々が興味ある話題に答えている。サッカーにおける「dicipline」の重要性を強く説いている。ひらめきや思いつきではなく、ルール・規律・秩序を持ってサッカーするという考え方だ。自分はサッカーには詳しくないので、彼が言うことが、どの程度一般的で、どの程度オリジナルであるかが、あまりわからないのだが、サッカー好きにも、そうでない人にも勧められる好著だと思う。あっという間に読み終わってしまうけど・・・

カフカ「城」

変身と並ぶカフカの代表作。城に呼ばれた「測量士」が、城に行こうとするが、いろいろな障害(?)にぶつかり近づくことができない。という状態が延々と続く、という未完の作品である。城は一種の官僚機構のように解釈されるときもあるが、確かにそういう感じはする。最初は珍しくておもしろいと思うが、文庫本で600ページあるからだんだんと飽きてくる。しかし、ストイックなまでに、この主人公と他の登場人物との間のダブルボケのようなやりとりが続く。読者のカタルシスを一切否定する。不思議な作品である。

トヨタの闇

今話題のトヨタはこんなにひどい会社という本。出版は2007年なので少し前。巨大な広告費で反対意見を抑えてきたというのは、最近の報道でよく言われているが、少し早めにちゃんと指摘しているのは偉いのだろう。

しかし、その「闇」の内容を見てみると、それほど特別には思えない。過労死・第二労組・下請けいじめ等。あまり誉められたことではないが、統計的には示されておらず、特殊ケースの羅列で、それで企業の体質を判断できるというほどではない。リコール問題についても、出荷台数が多いんだから、まあこれくらいはあるのでは、という気になってしまう。タイトルほどは刺激的な内容ではない。

源氏物語 巻十(瀬戸内訳)

瀬戸内訳源氏の最終巻。浮舟・手習・夢浮橋の三帖が入っている。二人の端的な男性に翻弄される浮舟の描写が素晴らしい。

瀬戸内の訳は大変わかりやすく、多少くどいくらいきちんと書き下されている。結構ストレートな性的表現もあって驚くこともあるが、万人に薦めることのできる訳と言えるだろう。しかし、これがベストかと言われると難しい。源氏のパーフェクトな訳はあり得ない。必ず訳者の色が出てしまう。いろいろな訳にふれつつ源氏の本質に近づいていかなければならないのかなと思う。

book review:「予告された殺人の記録」

G. ガルシア=マルケス
新潮社
発売日:1997-11

なぜ、彼は予告されていたのに惨殺されてしまったのか・・という話。最初は状況がよくわからないで、もどかしい感じがあるが、徐々に明らかになってきておもしろくなってくる。この辺は上手だと思うが、ややテクニックに頼っているような印象も受ける。

しかし、読後感はあまりすっきりしない。花嫁が以前通じた相手は本当に被害者だったのか、ということは曖昧にされているし、「人の名誉のための殺人は肯定されるのか?」というテーマが含まれていて、倫理的な検討をするのかと思わせるが、結局あまりされない。

この本を読んだ多くの人は、実在の事件に基づいているということに感心をもったようだが、それは覗き的な見方というもので、純粋にこの文学を受容している態度ではない。よく出来ている作品だが、やや消化不良だった。

世界の10大オーケストラ

世界の10大オーケストラと行っても、その選択は「有名な」「上手な」という観点だけではなく、この本のテーマの一つであるカラヤンに関係するオーケストラが選ばれている。この選択は悪くはない。例えば、ロンドン響はないが、フィルハーモニアはある。普通に実力を考えれば、ロンドン響だろう。しかし、エピソードを考えるとフィルハーモニアのほうがおもしろい。この本が主に描く第二次世界大戦前後のころは、オーケストラ力学という意味ではかなりおもしろかった時代だろう。現代はそれに比べれば平和だ。エピソードはいろいろとおもしろく、それなりに楽しく読めるが基本的には二次情報で、大きな発見はない。クラシック好きの薀蓄という感じもある。

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